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『学童野球メディア』初代MVPは今――。

2026.02.06注目戦士
『学童野球メディア』初代MVPは今――。

 小学生の甲子園で衝撃の124㎞!! 2023年の学童球界を席捲した“スーパー6年生”は、その後も数々の伝説を残していた。中学入学から2ヵ月で大田スタジアムの外野席へ打ち込み、投げては翌月にノーヒットノーラン。1年夏に全国デビューし、2年夏の全国で胴上げ投手に。迎えた2026年、中学ラストイヤーは春の全国大会から始まる。東京・駿台学園中の藤森一生主将(新3年)は、学童野球メディアの『初代年間MVP』でもある。現在の最速は136㎞で、中1の秋から通算40本塁打。それらはいかにして生まれてきたのか――中学軟式の全国大会や部活動にも触れつつ、特別リポートをお届けしよう。

(動画&写真&文=大久保克哉)

プレー動画➡こちら

 ふじもり・かずき

藤森一生

[東京・駿台学園中/新3年]

【Personal Data】

出身地:東京都

出身チーム:東京・レッドサンズ(学童軟式)/読売ジャイアンツジュニア

投打:左投左打

ポジション:投手/一塁手

身長体重:172㎝64㎏

50m走ベスト:6秒2

直球最速:136㎞(2025年12月/ヤクルト戸田球場)

通算本塁打:1年秋~40本(ランニング含む)

好きなプロ選手:今永昇太(カブス)

※2026年2月5日現在

■学童野球メディア2023MVP記事

2023.12.31➡こちら

すんだいがくえん

駿台学園中学校軟式野球部

【学校創立】1991年(平成3年)※休校を経て中高一貫校として開校

【学校所在地】東京都北区王子6丁目1−10

【野球部顧問】西村晴樹(2007年~コーチ、2010年~監督)/平田理樹/大島雅樹

【全国3大会成績】

全中=出場7回/優勝2回=2022年、2025年/3位=2018年

全日本少年=出場1回(ベスト8)

全日本少年春季=出場6回/最高成績2023年ベスト8

【主なOB】

清水昇(ヤクルト)/林謙吾(明大2年※山梨学院高で2023年春の甲子園優勝投手)/駒橋優樹(横浜高3年※2025年春の甲子園優勝捕手)

H近藤に次ぐ“新伝説”

 東京都の葛飾区にある奥戸総合スポーツセンター野球場。軟式専用のスタジアムとして40年親しまれている、通称「奥戸球場」には伝説があることをご存知だろうか。

 来たるWBCの侍ジャパンにも確定している近藤健介(ソフトバンク)が、修徳中の1年時にライトへ場外弾。左打席から放った打球は、両翼90mのフェンスと後方のネットも軽々と超えて、その向こうに建つ体育館の屋根にぶち当ったという。

 昨年の秋。これに続く“新伝説”が生まれた。やはり、ライトの高いネットの向こうへと消えていく場外アーチ――(※動画参照)。

 打ったのは駿台学園中の背番号10(主将)、藤森一生(2年)だ。対戦相手は近藤の母校で、全国出場10回以上を誇る名門私学の修徳中。しかも舞台は、春の全国大会出場をかけた都新人戦の準決勝だった。

 3月の全日本少年春季大会の東京都の出場枠は2。負ければ出場切符を失うという強豪対決で、藤森の場外弾は先頭打者ホームランでもあった。これで波に乗った駿台学園中は6対2で勝利。翌週の決勝は、名門クラブの足立BKベースボール(ブラックキラーズより改称)を8対0の5回コールドで下し、東京第1代表として春の全国大会の地・岡山県へ乗り込むことに。

 迎えた2026年、藤森の第一声はこういうものだった。「いよいよ勝負の年ということで、(野球部の)引退も迫ってきているし、覚悟をもってやる。そういう意識がこれまでより強くなっています」。

 野球部の始動は1月6日だったが、正月の3日目には部の仲間と自主練をスタート。それも「覚悟」の表れだろう。

 中学軟式野球部の生活は、高校の硬式野球部と同じく2年半。長くても3年夏の全国大会をもって部を去ることになり、予選敗退ならその時期はもっと早まる。

 また、野球部の特徴ひとつは、平日のキャンパスライフや朝夕の練習も含め、部員たちで共有する時間が圧倒的に長くて濃いこと。結果、3年生の夏の終えんや涙は多くの感動を呼ぶが、中学野球は報じるメディアがないばかりに世に広くは知られていない。

「中学の軟式はケガのリスクが低いですし、身体を含めて高校生になるための土台をしっかりとつくれています。硬式より地味かもしれないですけど、プロ選手もいっぱい生まれていますし、駿台学園中では野球の細かいことも人としても学べています。やっぱり自分は、軟式を選んでよかったなと思います」

 全国大会については別表と解説をご参照いただきたい。藤森が選んだ私学・駿台学園中の全国デビューは2011年夏の全中で、清水昇投手(現ヤクルト)を擁して8強入り。全中は通算7回出場しており、2022年と2025年に優勝している。夏の全日本少年大会は2021年に初出場。春の全日本少年大会の初出場は2015年で、今春で3年ぶり7回目の出場となる。

2011年8月17日、和歌山県で開催の全中1回戦で、駿台学園中は宮城・仙台育英秀光中等にサヨナラ勝ち。エース清水昇(上)が完投し、全国初陣を飾った

鬼の速球136㎞

 昨年暮のNPBジュニアトーナメント2025で3位となったヤクルトJr.の面々は、忘れるはずがないだろう。大会直前の12月21日、ヤクルト戸田球場で駿台学園中の胸を借りたテストマッチのことを。

 この世代の2学年の差は、あまりにも大きい。難関のセレクションを経たNPBジュニアといえども、所詮は小学生だ。一方の駿台学園中は1・2年生の新チームながら、夏の全中Vメンバーが5人もいて、藤森はその胴上げ投手。また同日は、巨人Jr.にも胸を貸した駿台学園中だが、「本番間際で自信をなくすといけないので」と手心を求められていたという。

「でも、ヤクルトジュニアさんのほうは逆に『速い球も見ておいたほうがいい』ということで、本気で投げさせてもらいました」

 藤森はこの試合で自己最速を136㎞に更新。当然、6年生たちのバットはその速球にほとんど当たりもしなかったという。

「(中2の夏から)急に球のスピードが伸びてきていて、最近の感覚でも調子がいいので、いずれ140㎞には乗っけたいと思っています。ただ、球速は出ても打たれるピッチャーはいますし、球速以上に大事なものというのもあると思うので。ホントに自分もこれから大人になるというか、球速じゃないところでも成長していきたいなと思います」

 ちなみに藤森も、6年時に巨人Jr.でプレーした。ジュニアトーナメントでは125㎞を投じて大会唯一の完投に、サク越えアーチも。そして銀メダルと優秀選手に輝いている。

 所属していたレッドサンズ(東京)では、4年生から3年連続で全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)に出場。エース兼主将で挑んだ6年時は124㎞を投じ、優勝することになる大阪の名将も「あんなにすごい子、見たことない!!」と目を丸くした。しかし、チームは準決勝で敗れている。

 学童野球では、夏も冬もあと一歩でなれなかった日本一。藤森は中2の夏にして、その座に上り詰めた。三塁を守るか、マウンドに上がるかして全中(全国中学校軟式野球大会)で優勝。決勝では最速135㎞もマークした。

「2年生でそういう経験ができたのは大きいと思いますし、大事な時間になりました」と振り返る左腕は、“未来モンスター”であり続けているのは間違いない。

非登板時は1年時は中堅、2年時は三塁、この新チームでは一塁を守っている

 ただし、中学での2年間は決して順風満帆ではなかった。むしろ、茨の道でもあったと指摘するのは、駿台学園中の名将・西村晴樹監督だ。

「入学してすぐに大田スタジアムでホームランを打ったり、スタートが良すぎたところがあったので。そのなかで1年夏の全中にも行って1回戦で負けたり、なかなかちょっと思うようにいかないところも出てきて…」

西村監督は東京・二松学舎高、日体大を経て社会人軟式や米国独立リーグでもプレー。2007年に駿台学園中で教諭に。2010年から軟式野球部を率いて全国区の強豪へ押し上げている

野球人生初の挫折

 言うなれば“中学の洗礼”も鮮烈だった。鳴り物入りで強豪野球部の門を叩き、投打で期待以上の働きをしてきた藤森が、文字通り打ちのめされたのは1年生の8月。福井県で開催された全中の1回戦(対秋田・秋田市立泉中)だった。

 駿台学園中は2回に1点を先取し、先発した藤森は6回まで無失点。最終の7回は二死一、二塁とピンチを招くも、あと1球で勝利という状況までもってきた。

 しかし、その1球を中前に弾き返されて1対1に。そしてタイブレークの8回途中で、投球数が99球となって降板(※中学軟式は1日100球までがルール)。チームは直後にサヨナラ負けしている。

「あの1球(同点打)はストレートでしたけど、疲れもありましたし、変化球が入らなくて真っすぐしかなくて…」(藤森)

 同じストレートでも、自ら勝負と決めて腕を振ったというよりは、アップアップでの一択でしかなかった。それを痛打されたのもショックだが、それ以上に痛感したのは己の力不足と中学野球のレベルの高さ。その後は打撃も好調とはいかず、アベレージは下がっていったという。

「ホントに2個上の先輩たちに力の違いを見せつけられたという感じ。小学生ではあまり失敗がなくて、自分が思うような6年間だったんですけど、そこで通用したことが中学では通用しなかったり。小・中の違いがホントによく分かりました」

 野球人生で初めてと言える、挫折感。これを拭うには練習しかなかったという。「先輩方に追いつきたい」との一心で食らいつき、対外試合ではあえて「相手を圧倒する」という強い気持ちで。帰宅後も「負けない」という気持ちで練習を重ねながら今日に至っている。

 そうした日々の積み重ねが、2年夏の全中優勝、胴上げ投手に結びついたのは言うまでもない。そして引退した3年生とともに全中の地・佐賀県から帰京して5日後。3日間のオフが明けて始動した新チームで、藤森はなるべくして新主将に。

 迎えた新人戦では、打てる&走れる一番バッターとして打線をリードしつつ、抑えのエースとして勝ちゲームを締めてきた。コールド勝ちした都の決勝は未登板だったが、マウンドでの役割と長所を本人はこう語る。

「いくところでいける。勝負どころで空振りとか三振とか、チームとしてほしいものが奪えるところだと思います」

 西村監督は、複数枚の投手育成と適材適所の起用をベースとしている。投手・藤森については「身体ができるまでは、ぜんぜん焦らせないでやってきています」と前置きしつつ、「ノーアウト二塁で三振が取れる」と、信頼のほどを端的に語っている。

スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォーク、スクリュー、ツーシームと変化球も多彩

 春の全国出場を決めた新主将は、安堵と手応えを口にしてから、こう気を引き締めた。

「先輩たちからの良き伝統を受け継がないといけませんし、夏の日本一の価値を高められるかどうかも自分たち次第。まずは春の全国舞台を踏めることになったのは良かったですけど、まだ価値は高められると思っています」

「今の藤森が一番抜けているのは走塁の判断力。ボールと自分の距離感がよくわかっているし、上のステージでも通用すると思います」(西村監督)

竹馬の友とともに

 副将として新主将を支える鈴木真夏(東京・高島エイト出身=下写真)も、正一塁手として昨夏の全中優勝を経験。その関東予選では最速129㎞を投じ、新チームでは主に先発を任されている本格派の左腕だ。

 そして実は、藤森とは就学前にジャイアンツアカデミー(巨人軍の通年スクール)で出会ってからの付き合い。竹馬の友であると同時にライバルでもあるが、藤森のリーダーシップには感心するばかりだという。

「カズキ(藤森)はザ・キャプテン。チームをまとめて全員を一緒の方向に向かせてくれる。練習から雰囲気をつくりあげるのがめちゃくちゃうまくて、締めるところはグッと締めるし、試合前は声を張ったりとか熱い感じなんですけど、冷静に全体もみている…。副将の自分は、みんなのテンションを上げてからカズキに託すという役割分担です」(鈴木)

 世代屈指の2人のタレントが、それぞれ自ら献身的にチームに尽くしている。手厳しい西村監督も、その現状に及第点を与えている。

「久しぶりにストレスのない世代。間違いなく、藤森と鈴木のチームです」

 藤森個人について「人間として偉い!」と目を細めた指揮官は、こう続けた。

「態度も顔つきも、アイツ(藤森)はウチに来た当初から『オレは特別だ』みたいなものはまったくないのでね。今でも自信がないところもあるし、過大評価されているのも分かっている。そういう最低ラインの謙虚さを保ってるし、自分だけ突っ走ったりしないで、周りに合わせることもできるし、締めるところはうまく締めてやっている…」

 MAX136㎞も、直近1年強での40本塁打も、中学軟式の球児にとっては夢のような次元。だが、西村監督から人としてそこまで認められるのは、もっと至難でレアかもしれない。

 副将の鈴木は、幼なじみの藤森と歩む中学ラストイヤーに大きな野望を抱いていた。

「選手としてカズキに負けたくない気持ちももちろんあるんですけど、それよりも2人で夏の横浜スタジアム(全日本少年大会)に行きたい。そこに出て勝つことが一番の目標です。そのために、お互いに自分のこともしっかりやりながらチームを引っ張っていきたいです」

 一方の藤森は、目の前に全精力を投入する決意だ。将来の夢や構想を具体的に語らないあたりも、学童時代から変わっていない。

「目標はまず、春の日本一。この大会(全日本少年春季)は出場チーム数も多いですし、ここで勝つことが真の日本一だと思っていますので、今はそこに全集中したいです」

 昨年の全中に続く夏春連覇。そして夏まで3季連続の日本一へ。やれるかどうかは神のみぞ知るところだが、それだけの資格は有しているだろう。名将も認める背番号10と、竹馬の友がけん引するチームであるから。

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